五行の金は人体においては肺で五季では秋にあたります。秋は収穫の季節です。実りの秋はまた、春芽をふいて夏茂った草木の終焉の時です。山々の木々は色づきながら落ちていきます。内経には『心を穏かにして自然界の粛殺の気の影響を和らげる。』と書かれています。肺は五志の悲です。秋は物悲しい気持ちになる季節です。
・・・秋の日の、ビィオロンのため息の身にしみてひたぶるにうら悲し
・・・鐘の音に胸塞ぎ、色変えて涙ぐむ過ぎし日の思い出や
・・・ああげに我はうらぶれてここかしこ飛び散ろう落ち葉かな・・・というゲーテの詩があります。うろおぼえで違っているかもしれません。
悲しみ過ぎは肺を傷つけます。心を穏かにして、収穫に感謝して楽しむ事が大切です。また肺の化は収・気は燥・味は辛・色は白・・・人体においては皮・鼻・涕(鼻水)・毛・咳・・・秋は空気も乾いてきます。鼻や咽など乾燥しやすくなり、エヘン虫にやられ易くなります。
化は収斂の収で涼しくなると毛穴も引き締まって寒邪を侵入させないようにしようとします。肺の働きが弱いと防衛力(衛気)が不足し、皮毛を収斂できずに風邪をひいたり体調を崩しやすくなります。もし衛気が不足しているならこれから風邪やインフルエンザが流行する時期に入るので衛気を益すという名前の衛益顆粒で補っておきましょう。
今日は台風が近づいてきていて空気が湿気を含んで重い感じですが、秋は涼しく空気も乾いてきます。肺系は外界とつながっている為、空気の乾燥や冷えなどの影響を直接うけます。肺陰が不足している人は空咳、咽や鼻の乾燥感、痰が粘って出しにくいなどの症状がでます。咳症状が出ている時は麦門冬湯や潤肺糖漿を、体質強化には八仙丸を使います。
肺気が不足している人は風邪をひきやすい・アレルギー性鼻炎・肺活量が少ないなど肺のエネルギーの不足が見られます。肺気を補うには衛益顆粒を使いますが、製品にはなっていませんがが補肺湯という処方もあります。また、脾気虚の人は『母病が子に伝わる』という理論から補中益気湯や黄耆建中湯を服用します。肺気と肺陰の両方が不足しているときは麦味参顆粒がいいです。
風邪は万病の元 肺は風邪の入り!肺虚の人は補って冬に備えましょう。
2007年10月ブログ暮らしの中の中医学より
中医学は病気の原因を大切な指標にします。
関節が痛いよ
カメさんは水の中にいるから寒湿の邪気にさらされていたのが原因かな?散寒去湿の漢方薬をつかうかな?
関節が痛いよ
アリさんは暑い夏によく働いて消耗したかな?気血不足のところに風邪が入ったかな?去風して補血活血するかな?
関節が痛いよ。
ブタさんは普段から運動もしないのに食べ過ぎてるよ。だから食積がたまって身体に痰湿があるよ。痰湿で気血の巡りも阻害されて悪くなってるし、瘀血も考えなくちゃね。やっぱり化痰利湿・活血化おを主として去邪するかな?
漢方は病因考えにいれますが、メタボリック症候群は病因を考え病気を防ぐと言う意味で同じです。よく言われているメタボリック症候群とはなんでしょうか?
「ぼくは腹囲が大きいと危ないかな?」
という程度に思っている人も多いかと思います。(現時点においての腹囲の値 男性85cm以上・女性90cm以上)
■厚生労働省のホームページによると
メタボリック症候群とは心血管疾患予防を第一義の目的としてハイリスクグループを絞り込むために定義された疾患概念であり、内臓脂肪の蓄積によりインスリン抵抗性(耐糖能異常)、動脈硬化惹起性リポ蛋白異常、血圧高値を合併する病態である。・・・と書いてあります。
つまり、狭心症や心筋梗塞や脳死卒中など循環器系の病気を防ぐ為に、危なそうな状況にある人達を見つけ出し、予防していこうというのが目的です。この内臓脂肪+(血糖値↑血圧↑脂質代謝のうち2つ)あると何もない人に比べて心血管系の病気になる確率は30倍だそうです。病因は飽食と運動不足による過栄養と書かれています。
まず 生活(食を含めた)のチェックからです。
中医学でも病因を飲食の不節とするものが色々あります。
原因を飽食と運動不足としていますがエネルギーとして使いきれるだけ食べたれば蓄積はありません。漢方的には食積で、その為にできた痰湿、瘀血です。痰湿・瘀血は循環器系に影響します。食積に対し新たな食積を作らないよう食養生することは必須です。・・・これが一番大変なんだよね。
中医学では食積にたいして消導薬をつかいます。消導薬は食品ともいえるもので、ゼリー状のお菓子になっているのを見かける山査子もそうです。山査子は油膩肉積や小児乳積に有効で宿食停滞に用いられます。また神麹は小麦粉やふすまに薬草などを加えて発酵させた、発酵食品です。麦芽・穀芽また大根の種や鶏の砂のうも消導作用があります。ちなみに晶三仙は山査子・神麹・麦芽・穀芽でできた食品です。
食べ物は気血生化の源(気血を作る源)でも摂りすぎは食積になり、さらに痰湿になり気血のめぐりを停滞させて瘀血になります。ダイエットといって無理な偏った食生活を行うと気血が作られず体力や免疫力も弱まってしまいます。また一時的に痩せてもリバウンドしたのではなんにもなりません。一生つづけられる食生活や運動をめざしましょう。
飽食と運動不足を漢方的に考えるとさらに病因を追求できます。胃は腐熟を主るといいますが、この働きは釜の中の米を炊くと言う事と比喩されます。釜の米を炊くにはある程度の火力が必要です。ストレスなどによってこの火が亢盛になると釜の中の物はどんどん出来あがって送られていきます。
しかし、
そんなハイスピードな状態で、飲食物は気血を作れる水穀の精微の形になったでしょうか?
また、運化を主る脾は血やエネルギーに変化させたり、輸送したりできたでしょうか?
脾は働き過ぎで、くたびれて脾気虚になっていないでしょうか?
また運動不足になっているのは、おっくうだったり、だるかったり、めんどくさがりやだったり、気の不足が原因ではありませんか?
中医学では臓腑・気血津液・寒熱・虚実・陰陽などのバランスからも考えます。
2007年10月ブログ暮らしの中の中医学より
梅雨といえば 湿気・・・陰気の多い季節です。かび・ばい菌が繁殖しやすい季節です。傷が治りにくかったり、食中毒、食あたりしたり、おでき・湿疹がジュクジュク・水虫、膀胱炎、関節の痛みや腫れ・腰痛、痰・・・・湿気の影響をうけます。脾気虚、腎陽虚、肺気虚など内湿があるタイプは湿気の影響を受けやすいようです。体内の湿の処理は脾の運化・肺の宣発粛降・腎の気化によって行われます。外湿の影響を受けないようにしましょう。温かいものを飲んだり食べたりするように心がけ、雨にぬれたり汗をかいたとき、必ずふいて着替えるなどしましょう。
身体の湿気が多い(内湿)タイプの人は外の湿気の影響をうけやすいといえます。身体の中の湿気は水っぽいものとネバネバした粘度の高いものとあります。粘ったものは痰といわれています。五臓で水液代謝と関わっているのは脾・肺・腎です。肺は汗や呼吸で水分を外に出します。腎は尿から出します。脾は水液を運化します。つまり水液の運送屋さんです。水液代謝に異常が現れた時は何処に問題があるか考えます。
「のどが乾いちゃった」
「昨日汲んでおいた水と今汲んだ水とどっちがいい?」
「・・・・・・今汲んだ水に決まってるじゃない! プンプン!」
溜まって停滞しているものはきれいではありませんね。人の身体の中も同じです。水液代謝の失調により溜まったものは湿、湿濁、痰、痰濁、濁飲・・・いろいろな言い方がありますが放っておきたくないものです。
咳・息苦しい・胸苦しい・鼻づまりなどの肺の症状がでていたら、肺の宣発粛降の働きが失調するしている為に水が停滞しているのかな?と考えます。脾の水の運化が失調している時は脾虚の症状が伴います。運化食欲不振・消化不良・お腹がゴロゴロいう・軟便や下痢(弛緩性の便秘の時もあります)・だるい・疲れ易い胃下垂や脱肛などの内臓下垂、その他統血不足による出血などがあります。また気血の生成が低下すると心も弱まって考え過ぎ、思いすぎになりやすく不眠・動悸などが出てくることもあります。
・・・雨や冷たい飲み物など湿気はだめなんだ!働けないよ!・・・と脾が悲鳴をあげています
脾は湿を嫌うといい外界からの湿の影響を受けると脾の機能が失調します。これを寒湿困脾・・・冷たい湿気が脾を困らせてる・・・といいます。脾虚の人はダブルパンチですね。「足腰が弱くて浮腫みやすいし、耳鳴りが少しあって夜中に何度もおしっこにおきます。それに 寒がりでエネルギーも無いので、ついウトウト してしまう私です。」腎陽虚です。水液代謝の失調が『腎の水を主る』働きにある時は下肢の方に浮腫みがでます。また、身体の冷え・寒がるなど陽気不足が伴います。水を代謝するにはエネルギーが必要です。
エネルギー・・・動力・・・燃焼・・・熱 というようにインスピレーションできると思いますが、人の身体も同じで、熱エネルギーが必要です。腎陰・腎陽は真陰・真陽といわれ身体の陰陽の本です。腎陽が不足すると代謝エネルギーは落ち込んで水は身体に停滞します。
梅雨
肺・脾・腎が虚している人は梅雨は体調が悪いですね。身体の除湿を考えましょう。水湿を外に出すのは
①尿から
②汗から
③便から
があります。
「湿を治するに小便を利さざるは、それは治にあらざるなり」といわれているそうでうが、まずは余分な水湿はおしっこから出すことを考えます。皆さんが知っていてよく使われるのは五苓散です。五苓散は温めて水湿を除きます。働きは利水滲湿・温陽化気です。水を利し(通じさせ)湿を滲みださせ、温めて水湿に尿に変化させるエネルギーをアップする・・・と理解しています。
残尿感や排尿後しぶるような感じがして膀胱炎かな?という時に猪苓湯(ボウネツ錠)を服用する人も多いと思います。
だから「猪苓湯って膀胱炎の漢方でしょ」って思っている人も多いと思います。排尿困難・排尿痛・血尿の症状がみられる状態を湿熱蘊結下焦(湿と熱が下の方の水の通り道に鬱滞してる)といって猪苓湯を使います。もう一つ水熱互結の時、猪苓湯を服用します。『もし脈浮、発熱し、渇して水を飲まんと欲し、小便利せざるものは猪苓湯之を主る』とか『少陰病、下痢、六七日、咳して嘔し渇し、心煩し眠るを得ざるものは猪苓湯之を主る』つまり身体に溜まった湿気と熱をさましながら尿から出してしまおう。というのが猪苓湯です。
「関節が浮腫んだので防已黄耆湯飲みました。」
「水肥りタイプなので防已黄耆湯がいいと思います。」
こんな言葉を耳にします。防已黄耆湯は湿と関係ありそうだなという感じがしますが、どうでしょう。
防已黄耆湯を使う時は
風湿 脈浮 身重く 汗出で悪風する
風水 脈浮 身重く 汗出で悪風する
となっています。
また服用後に皮下に虫のはうような感じがすることがあるが、衛陽回復の兆しだと書いてあります。衛陽は衛気のことで体表部を巡り、身体を温め外邪の侵入から身体を防衛する気です。つまり衛気不足で汗がもれやすいタイプの内湿を除く為の方剤といえます。もし湿が多い時はヨクイニンや五苓散を一緒に服用しましょう。またお腹が脹る時は枳殻や陳皮も服用しましょう。と書いてあります。
梅雨の頃は寒湿や湿熱が問題をおこしますから注意しましょう。
2007年6月ブログ暮らしの中の中医学より