養生の話

2008-10-01

 不老長寿は昔から人々の願いだったと思います。いつまでも若々しくいたい、健康で長生きしたいと願うのは自然な事です。
この事は紀元前の昔から人々の課題でした。黄帝内経には次のように書かれています。真人と言われる人は人類の初期の時代にあって天地の道理を知り、陰陽の変化に応じ、養生の道を掌握しているので寿命が尽きる事が無い。

 また至人といわれる人はその後の時代にあっても世俗の正しくない生活から離れ、自然と調和し、陰陽、四季の変化に応じて養生したので真人と同じようであった。聖人と称される人は世俗にあっても心をいつも穏かに保ち、世俗と天地の間の調和した気の中いて、こころも身体も衰えないので百才を過ぎても生きる事ができる。賢人といわれる人は自然の法則をよりどころとして、真人をお手本として養生していくので長生きできる。

聖人の所に
「以恬愉為務、以自得為功」
とあります。

 穏かで楽しめて欲が無い・・・と言う事だと思います。漢方で考えると老化とはなんでしょう?

五臓皆衰・・・ 五臓が衰え
筋骨解堕・・・ 筋骨が弱まり
天癸尽矣・・・ 天癸は性ホルモンなどのことでそれが尽きる

 と内経にあります。五臓六腑の精は腎に貯えられているので、腎の衰えは五臓六腑の弱りと関係しています。腎は「成長 発育 生殖を主る」といって、育ち、子を成し、老いるという人の一生と深く関っています。生れた時に持っている命の種のようなものは腎に貯えられています。腎には命門の火があるといいます。その火は生きていく上に不可欠なエネルギーです。腎を補う事は五臓六腑も衰えないようにする事です。精を補う事は腎を補う事です。精血同源・肝腎同源といい精や血の不足は容貌の衰えになります。

 血や精は身体を構成する物質的基盤です。簡単にいうと身体は血・精・津液(水)でできている・・という事です。老化とはこれら全部の不足傾向になります。また、エネルギーも不足しがちです。特に血や精はエネルギーの素です。特に腎気、腎精は身体を育て維持する力です。腎がしっかりしているという事は身体の根本がしっかりしているという事です。

 また 腎の働きの1つに

「腎は骨を主り、髄を生じ、髄海に通じる」

 という事があります。腎は骨を主るとあるのは 骨に関係する事すべてをさします。骨は新陳代謝しています。一方で作られ、一方で壊され 骨形成と破骨がバランスよくおこなわれています。それに女性ホルモンや副甲状腺ホルモン 活性型ビタミンDを作る腎臓の働き など栄養(カルシウムやビタミンD)の摂取不足と運動による負荷以外はすべて『骨を主る』のうちです。

 中薬学をみると益精 益髄と書かれたものは動物薬といわれるものに多く力があるものとされます。また「髄を生む」とあります。髄は骨髄 脊髄 延髄 脳髄 などで 髄海は脳の事です。

 腎がしっかりしていれば元気で長生きです。でも 脾臓が弱いとそうはいきません。腎に貯えられた精は脾の働きにより後天的に補充されているからです。どんなに丈夫で良い身体を持って生まれてきても、栄養不良では身体は養われないし、腎精も不足して腎は弱くなってしまいます。もともと脾気虚・暴飲暴食で脾が弱った・ストレスで肝に脾が攻められたなど脾の働きがわるい時は脾を健やかにしなくてはいけません。また瘀血で血行障害があると臓腑に栄養が運ばれず、老廃物も停滞しがちになります。
つまり瘀血も老化の原因になるという事です。

 老化はなにか一つの物質が減るから老化するわけではありません。

例えば骨粗しょう症→カルシウム?

 中医学では腎の骨を主り髄を生む働きの弱りと考え補腎します。

肌がカサカサしてしわっぽくて→コラーゲン?

 中医では潤いは血や陰の不足とみます。滋陰、補血ですが、脾が弱い時は補気生血する事もあります。実際全体を考えることは とても大切な事だと思います。やっぱり全体のバランス・陰陽のバランスですね。

2008-06-01

パンダ⑤ 梅雨の頃は湿度が高いので、内湿のある人にとってはいやな季節です。湿は粘って、しつこく、重く、濁って汚くする邪気です。身体が重だるくなっり、関節がだるく痛んだり、下痢っぽくなったり、浮腫んだりと身体に影響します。食欲がなくなったり、頭がすっきりせず、なんとなく頭痛がつづいたり、めまいがしたりも湿のせいの時も多いです。また この時期の皮膚病、水虫なども湿が関係しています。汗が臭って、疲労し易い時も同じです。

 この時期、湿の摂りすぎに注意しましょう。特にジュース・缶コーヒー・炭酸飲料など口当たりがいいものは身体が必要な以上に飲みがちです。また お酒類も同じです。チョコレートや生クリーム、バターを使った甘い食べ物は痰湿がたまりやすいので少なめにしましょう。下痢っぽくなりやすい人はお腹をひやすので、冷たいもの、なま物はひかえましょう。お腹の調子を崩した時は早めに湿に勝つという名前の勝湿顆粒を服用しましょう。

 風湿の邪気が身体に入ったときに最適な漢方薬です。また食中毒が起こりやすい季節ですから五行草茶も飲んでおくと良いです。五行草茶は馬歯莧のお茶です。これはその昔 貧しい少女が赤痢になった時道端の草を食べて助かったという話がるくらいで細菌性やウイルス性腸炎の助けになると考えられている食べ物です。梅雨の時期 お茶は温かくして飲みましょう。冷たいお茶は胃腸の働きを停滞させ、胃腸に寒湿を停滞させます。ウーロン茶やプーアル茶、はと麦茶など利水の働きのあるお茶は身体をさっぱりさせるのでお薦めです。温かくして飲みましょう。

 「ジトジトして気持ち悪いからエアコンをドライにしておいたの」
 「植物も水やりしすぎると根腐れしたり、植木鉢の土がかびたりするよ。」

 身体も同じですから湿気を除いて停滞を除くように工夫します。緑豆は春雨で知られていますが、緑色のあずき大の豆で、味も
あずきとよく似ています。あずきも浮腫みをとった利水の働きがありますが,『緑豆は10種類の水気(水によって起きる病態)を治療する』と書かれているそうです。緑豆でお汁粉をつくっておやつにしたり、お赤飯のようにご飯に炊き込んで食べるといいです。湿を上手にさばいてこの時期をのりきりましょう。

2008-01-01

パンダ⑦ この頃、ついつい寝坊になってしまって・・・ 身体が弱ってしまったのかしら?冬の朝は寒くて寝床から抜け出したくない気分ですね。この,冬は寒いという当たり前なことが身体にとって重用なポイントです。身体の陽気も不足しやすい時期です。

 冬の3ヵ月は『閉蔵』といいます。閉ざし貯蔵する季節と言う事です。冬は陽気を大切に保つ事が大事です。四季の過ごし方の中で唯一『遅く起きなさい』と書いてある季節なんです。人体における陽気は命と関わりがあります。冬、屋外に放りだされたら凍死してしまう事もあります。体温を維持する事はエネルギーのいる大変なことなのです。暖房が完備されデパートの中など暑いくらいの現代と違い、古代の人にとって陽気の保持は更に重用だったと思います。

 身体を温かくして、温かい物を頂いて、充分睡眠をとる事は冬の養生の第一歩と言う事が解ります。日頃、冷えやすい人やエネルギー不足の人は補陽剤を使って温めると同時にエネルギーやエネルギーの元の精血を補いましょう。参茸補血丸・双料参茸丸・海馬補腎丸・参馬補腎丸などそういった働きがあります。

 「それって皆補腎薬だよね。」って思うかもしれません。そうです。腎の陰陽は真陰・真陽といわれ陰陽の根っこみたいなものです。冬は腎の季です。この季節に腎陽を守りながら、腎陰(腎精)をしっかり補いましょう。また、精血同源ですから、血を補う事も大切です。当帰は補血・活血・散寒の働きがありますので、当帰の沢山使われているシロップの婦宝当帰膠がおいしく飲めて温まるのでお薦めです。女性は『血から衰える』といわれ、35才を堺に陰血が不足してきますから、薬膳にも使われる当帰は有効です。

 補陽するか、散寒するかは身体の状態によります。冷えるといっても皆が陽虚というわけでない時もあります。陽気の不足はだるい・疲れやすいなど気虚(エネルギー不足)の症状を伴います。陰血の不足により血脈が滋養されずに冷える時もありますし、瘀血による血行不良の為冷える時もあります。寒邪の侵襲をうけて冷える時もあります。冷える。寒がる。だるい。やる気がおきない。眠くてしょうがない。・・・などは陽気が不足してる可能性大です。

 是非、補陽薬を服用してみて下さい。

 家の中全体を温かくする為には、燃料を燃焼させ温かい空気を隅々まで送ります。送る通路が閉ざされていても寒い部屋ができます。でも大元は燃料と火力です。人において燃料は精・血で、火力は陽気です。燃料を補う方法は益精血・滋陰などです。また火力を補うのは補火になります。補火して精血を補わなければ消耗してしまいますが、火が下火になっているなら補火しなくては消えてしまいます。動力、火力と燃料の関係は人の場合もあるという事も考えておきましょう。

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