養生の話

2009-08-01

 私たちの身体には注意信号や危険信号のようなものが備わっています。そのセンサーはにぶってしまっても、過敏でもうまくいきません。例えば疲れたというのも注意信号のです。

疲れ→休息→回復

 これは自然なパターンです。ぜんぜん疲れない→無休(でも肉体的ストレスはかかっている)→つづくと身体に変調がおきる(眠れないなど・・・)逆になんにもしてないのに いつも疲れを感じる→休息→回復しない

「疲れ知らずの人は丈夫なんじゃないの?」
「センサーは大事なのよ。神経がたって 疲れに気がつかないって事もあるでしょ。」
「中医学的には肝や心が実してる状態かもしれないよ。」

 何度も書いていますが、中医学では心と身体の結びつきを重視しています。ですから身体の反応(信号は)心を表す時も多くも見受けられます。心(こころ)は心や肝を考える場合が多く、ストレスや感情的な事は肝・悩事や考えすぎなどは心でとらえるようです。しかし、どちらかを切り離す事はできませんし、他の臓腑との関わりもとらえなければいけません。

 このストレスや感情の中心となる肝は将軍といわれています。ストレスにより肝が実する(病的な状態になる)と他の臓腑を攻撃します。これを肝気横逆といいます。神経症の転換性障害はストレスが身体のいろいろな部分にでます。これも肝気横逆の状態です。

舌診アトラス 中医学では身体の信号として舌の状態をみます。(舌診)これは 誰でも見れる事です。快眠・快食・快便とかいいますが、これらは重要な信号です。それに加え、全身症状・尿の状態をチェック また 鏡で顔色や舌を見るようにしましょう。健康状態によって舌が違っているのに気が付くと思います。お店に舌診アトラスと鏡がありますので参考にして下さい。

 『三つ子の魂百まで』といいますが、特に幼い子供の心と身体の信号は大人が見てあげなければいけません。腎は先天、脾は後天といいます。発育が弱いのは腎が弱い場合も、脾が弱い場合もあります。体質的な弱さがあれば身体作りをしなくてはなりません。その際、脾腎を考え養生する事がいいと思います。

 また、幼い時期の心の発達はとてもとても重要です。潜在意識は記憶の倉庫だそうです。神経症など、この無意識の世界にも重要なキーポイントがあります。幼い子は五臓は未熟で五志も未熟です。大人が思いもかけない事に恐怖や不安を感じたりします。子育てはからだとこころの両方を大事に育てる事が大切です。

2008-11-01

パンダ① 肉食中心だときれやすくなる・・・などという事をよく耳にしますが、食事と心は関係あるのでしょうか?寝る前にホットミルクを飲むとよくねむれるよ・・・などともいいます。食べものと心は関係しているようです。甘草小麦大棗湯という漢方薬は 小麦 なつめ 甘草 の組み合わせです。いかにも食品ぽいですね。

 この漢方薬は心が弱っている時に使います。中医学では養心安神・和中緩急(こころを養い、物事を考える働きを安定させ、胃腸の働きを整えて、急な状況を穏かにする)の効があるとしています。

「こころ病めば麦を食うべし」
「肝急に苦しめば、急ぎ甘を食しもって急をゆるむ」

 などの言葉が昔の書物にあります。

 七つの感情と五臓は関係しています。五臓は五つの味(五味)と関係しています。また五つの色(赤・青・黄色・白・黒)の関係もあります。味や彩りがバラエティーな食卓は五臓が満遍なく養えるといえます。中医学で鬱症になる主なる原因『肝・脾・腎の損傷と気血の失調』と考えています。逆に考えると肝・脾・腎が弱い人は損傷を受け易く鬱証になりやすいし、気血が充実していない人もやはり鬱証になりやすいといえます。更にいえば神経の細いタイプや感受性の強いタイプの人は肝や脾や腎が弱く、気血が不足しやすいタイプといえます。ならば、気血を作る食事は重用です。

 パニック障害や抑うつ神経症 不安神経症・・・等 こころのバランスを崩している若者が多い事が気になります。身体のバランスはこころのバランスと関係があります。バランスの良いからだというのは筋肉もりもりの事でも 力持ちの事でも スポーツに優れている事でもありません。

五臓のバランス
気血津液の充実

 気血のスムースな流れの事です。わしも年をとって気が弱くなったものじゃ まだまだ お元気じゃないですか。万年までだいぶありますよ。若い時は新しい事に挑戦する意欲や大きな希望や夢をもっているものだと思います。時代のせいだという考え方もありますが・・・・本来 時代をかえる力は若者にあるのだと思います。

 でも なぜか疲れている。貧血・肥満・ダイエットによる偏食や栄養不良・若年性成人病・・・また形や検査値に現れなくても だるい 疲れ易い しびれる痛む その他不定愁訴となって現れる事も多いようです。しっかり三食食べましょう。もし 朝食が食べられないなら脾に問題があります。

 脾は『気血を作る源』ですから脾を元気にする事は重用です。穀類や芋類などは脾を健やかにします。お寺で朝粥を食べますが理にかなっていると思います。お粥は温かく脾臓にやさしい食べ物で吸収がよくすぐエネルギーになります。現代の食生活において脾は傷つけられる事が多いようです。冷蔵庫のなかった時代には考えられない冷たい物を常食、常飲する事 飽食の時代 グルメなどといって 食べ過ぎ飲み過ぎ偏食など みな脾を傷つけています。

「いっぱい食べられるんだよ。それでも脾がわるいの?」
「脾は食べ物を気や血に変化させる働きをします。」

 だから食べても疲れやすい時、血が不足したり 身にならない時など脾がうまく働いてくれていない証拠です。もし気血の生成が弱ければ心も肝も養われず、血に宿るといわれている心の神 肝の魂はより所をうしなって、こころが不安定な状態になってしまいます。何をたべるか、どうやって食べるか、いつ食べるかなど重用です。仏教で食事の前の祈りがあります。自分の働きに応じて、また徳をつむ為に、健康の為にお食事をありがたく頂くという主旨の祈りです。まさしく食は命の糧ですから、欲望で食するのでなく、身体の事を思って食する事が健康につながります。

2008-10-22

パンダ① 「この植物はたっぷりお水をあげてくださいね。でもこれは1週間に一回たっぷり水をあげれば大丈夫です。」植物は種類によって違いがあります。また 同じ室内用の観葉植物でも暑い真夏はたっぷり 梅雨の頃は少なめに水やりします。私達は日常 固体や気候に応じてより良い状態を考えて変えています。人の身体も個々の違いや気候の変化に応じて養生や治療をする事が大切です。

 身体の湿が多いタイプ 身体が乾燥ぎみのタイプが同じ漢方薬では変だと思いませんか?また、日本のように四季に変化があるところでは養生も変化に合わせた方がよさそうです。例えば咳嗽です。痰がでるか?でないか?痰の量が多いか?少ないか?絡んでるがでてこないか?痰1つとっても状況はちがいます。もし咽がカサカサして 痰がない または痰がへばりついて出てこないなどは 乾燥している状態です。だから潤す事が大切です。へばりついて出ない時でも水が多くなれば舟が進むように、潤して排出します。そんな時は潤肺糖漿や麦門冬湯など潤す方剤を使います。

「これとてもよく効いたのでAさんにもあげていいですか?」
「Aさんはも空咳ですか?」
「Aさんは咳をするたびに痰がでるようでティッシュでとっています。そうそう水っぽい痰がいっぱい出てくるっていってました。」
「それは 痰湿が多い状態です。潤すと痰が更に増える時もあります。」
「さむがりで服もきこんでいますが・・・」
「Aさんは湿気の多い状態のようです。寒と痰があるので、温めて乾かすようにした方がいいでしょう。」

 胃腸に関してはどうでしょう?脾胃の痰湿や乾燥ってなに?でしょう?

 先ず湿

 胃腸に湿気がたまってる事は吸収しきれない分がたまってると言う事です。脾の運化作用が弱いか 暴飲暴食により持ってる力以上に取り過ぎてる時もあります。(脾の運化とは栄養分や水分の消化吸収や輸送の事です。)余分な湿気で働きが阻害されて吐き気や嘔吐・下痢になります。

 それでは乾燥は?

 乾いていたらすべりが悪く送る力が不足するので便秘傾向になったり、受けつけにくくなったり 下の送れなくなったりして嘔吐になる事もあります。

 湿や乾燥と皮膚

 一般に湿疹が出来ると抗ヒスタミン剤やステロイド剤あるいは非ステロイドの消炎剤などをつけて治します。何度かつけて治ってしまえばいいのですが、繰り返す時はちょっと考えてみましょう。『皮膚は内臓の鏡』という言葉があります。中医学(漢方)では皮膚がジュクジュク湿っぽいか?カサカサ乾燥タイプか?対処の仕方は違ってきます。ジュクジュクは湿気があるわけですから菌が繁殖し易い状況です。水虫も真菌で身体のかびです。かびは高温多湿な環境を好みます。

 ではカサカサの肌はどうでしょう?

 外側からの刺激に弱くすぐに炎症しやすい状態です。自然界で乾かす原因を考えてみる時、洗濯物を思い起こすと、晴れて太陽がギラギラ暑い時もすぐかわきますが、風がある時もよく乾きます。風と熱は乾きにつながる事がわかります。肌の乾いている原因が熱による事も多くみられます。湿気が多いか、乾燥しているかで方剤選びは違います。湿気の多いと脾の働きは悪くなっています。

 『脾は湿を嫌う』という言い方をしますが、健脾燥湿の物を使い、栄養豊富で消化に手間取る(粘膩)の性質のものを避けます。湿が停滞して化熱してくると湿熱になります。スープが煮詰まるとドロドロしてくるように粘ってしつこいものになってきます。湿がドロドロしてきたものは痰です。脂肪も痰のうちです。ドロドロしたものは取り除きにくいしばい菌も繁殖し易いです。
化痰薬に清熱解毒と利湿の働きのある馬歯ケン(五行草茶)や白花蛇舌草な加えたりします。

 乾燥している時は潤す事が中心です。補血・生津・滋陰など働きのあるものを使います。熱の為に乾燥している時は清熱・涼血などの方法も必要です。逆に身体の栄養や物質面の不足によっておきる虚熱には知柏地黄丸(瀉火補腎丸)のような滋陰清熱のものを選びます。虚熱は素に身体という物質の弱りがあるわけですから、注意が必要です。火は物質を燃やすので物質は又火によって減るという事になるからです。ですから、虚火を抑えながらも陰を補うことはとても重用です。もし湿をさらに潤し、燥を更に乾燥させたら大変な事になってしまうのは明らかです。身体の声をきいて漢方を選びましょう。

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