中医学で考える熱中症

 今朝小さいクワガタが入り口ひっくり返っていたので、スイカにのせでベランダに置いたらずーっと食べてて飛んでいきそうにありません。その事はさておき、急な暑さに体がついていけない状態です。この辺りはカラ梅雨で六月から暑いので今年は沢山の人が熱中症になりそうです。以前 熱疲労も熱中症という話を書いた事があります。いやな汗、疲労感、頭痛、気持ち悪いなど熱中症の場合が多いようです。

何故 暑いと熱中症になるのでしょう?
何故 麦味参顆粒が熱中症の予防にいいのでしょう?
何故 西洋人参や蓮心がいいのでしょう?
何故 知柏地黄丸(瀉火補腎丸または知柏壮健丸の事)で身体が楽になるのでしょう?
何故 夏風邪に麻黄湯や葛根湯は向かないのでしょう?
何故 夏風邪は勝湿顆粒なのでしょう?

 夏は五行の火・五臓の心の季節です。つまり心は火と相対しています。夏は暑いので心臓の動きは活発ですが、オーバーヒートもしやすくなります。運動によって心は益々活発に脈は大きくなります。行き過ぎる心にダメージがきます。だから 運動中倒れる人もいます。

 汗は心の液といいます。汗のかきすぎもまた心に影響します。また心と腎は重要な関わりがあります。心は火 腎は水です。心の火は腎におりて腎陽を温め、そのエネルギーで腎の水は上に上がって心陰を補い心火が行き過ぎにならないようにしています。この事を交通心腎といいます。心腎の交通があってこそバランスがとれるわけです。ところが 心火が亢盛になってしまったらどうでしょう?また腎陰(腎水)が不足になったらどうでしょう?火の勢いがつよすぎれば やみくもに燃やし尽くすばかりです。また腎に水がなければ小さな火も抑制できません。

 この事はお年よりや子供の弱さとも関係しています。猛暑に対して心火を抑え、腎水を守らなくてはなりません。蓮心はハスの果実の胚芽で 清心瀉火・安神の働きがあります。つまり心火を抑えてくれます。

 蓮心茶は苦いですが、夏の暑い時はさっぱりすると思います。心火が肺に及んだ時は痰が粘ったり空咳になります。肺の熱をさまし潤すものに百合根や玉竹・沙参などがあります。百潤露はそれらが入った食品です。

 水分はこまめに補給ですが、水分に少し塩をまぜたり、梅干をとかしたり、イオン飲料が吸収が良いといわれています。これは中医学で考えても意味のあることです。塩は腎の引経の働きがあるといわれ、補腎薬も少し塩をおとした湯で服用すると薬が腎に入りやすいといわれています。水分も同じです。ただ夏は冷たい水分をがぶ飲みして、お腹を冷やし下痢になってしまう事がありますが、逆効果です。水分が吸収されないばかりか、栄養分の吸収も弱くなって体力を失ってしまいます。

 そう考えると水分の取り方は重要だといえます。 胃腸の調子がよくて吸収されてこそ身体の水になるのですから・・・

 熱中症の症状は 熱痙攣・熱疲労・熱射病に分けられ、熱射病が一番重症で体温調節機能が働かなくなって40℃を越えて意識がなくなり、出血傾向になります。高温と脱水状態にともなって起きますが、なりやすさには病気や体質が関係していると言われています。熱疲労の状態を暑気あたりと言ったりしますが、中医学で暑邪が身体を侵襲すると考えます。では暑邪とはどんな邪気でしょう?

 暑いは熱いです。陽邪で熱ですから炎上します。つまり火の性質をもちます。火といえば心でしたよね。また昇散という性質を持ち体から汗と伴に気も出て行ってしまいます。気と津液を失った状態を気津両傷といいます。また暑邪は湿邪を伴うので四肢の重だるさやみぞおちやお腹に脹満感がでたり、下痢したりの症状が表れます。胃腸症状の悪化により、特に嘔吐や下痢は更に津液や気を失う結果になります。

 熱中症は火(熱)と熱による燥そして、湿(湿度が高い事や熱や燥の為に飲む大量の水分による)が原因です。

1 心火を抑える事
2 津液や腎水を補う事
3 健脾利水して、水の運化を助け 栄養や水分の吸収がスムーズに行われるようにする事

 熱中症になりやすい体質は慢性的な脱水傾向・・・つまり陰虚タイプです。もちろん血は陰のうちですから血虚もその傾向にあります。脾胃気虚の人は運化作用が弱い為やはり心配です。衛気不足も汗が漏れやすいので、漢方の力を借りましょう。

 陰虚火旺の人は特に心配です。陰液の不足により内熱ある状態です。この場合に知柏地黄丸(瀉火補腎丸または知柏壮健丸の事)を使います。しかし、腎陰の不足は徐々になってきたわけですから一朝一夕には改善しません。しかし 火旺している火を抑え 腎陰を補う事は有効です。とりあえずこの猛暑に対して蓮心茶で心火を抑えながら、生脈散製剤の麦味参顆粒で気津を補っておきましょう。