「頻尿にいい漢方薬を下さい。」とはいっても頻尿と一口にいっても人によって違います。例えば膀胱炎の時もあるし、冷えて近い時もあるし、コーヒーやお茶など飲みすぎている時もあるでしょう。中医学では膀胱湿熱・腎陰虚・腎気不固・肺脾気虚・肝気鬱結に分けられます。頻尿によいと宣伝されてる漢方薬に八味丸(八味地黄丸)があります。ハルンケアなども八味丸です。これは腎陽虚といって腎虚で陽気が虚している時の方剤です。腰や膝に力が無てだるい・下半身の冷えや浮腫みがある時は服用します。八味とは8つの薬味が入っているという意味です。補腎の基本は6つの薬味(熟地黄・山薬・山茱萸・牡丹皮・沢瀉・茯苓)の六味丸です。六味丸+附子+肉桂が八味丸です。八味丸は尿の出が悪く浮腫む場合も使います。
尿の量・色・濁りなどは重要な指標になります。一般に冷えや気虚の時は透明で量も多く、実熱 虚熱 湿熱など熱症がある時は色が濃く量は少なくなります。膀胱炎は下焦の湿熱で湿が多い時と熱が多いときとあります。膀胱炎は排尿痛があるとしています。今回の頻尿の話は膀胱炎についてはおいておきます。頻尿で尿量が多い時は腎気不固や肺脾気虚が考えられます。
腎気不固とはなんでしょう?
腎の働きは 精を蔵す 成長・発育・生殖を主る 水を主る 納気を主る でしたね。水を主る機能が失調すると水液代謝の機能(腎臓や膀胱の働きなど)が低下して障害がおきます。気の働きの1つに固摂があります。しっかりまもり留め固定するという意味だと思っています。血液が脈管から漏れないようにしたり汗をかきすぎで体力を消耗しすぎないように、便や尿がもれないように・・・これは皆気の固摂によるものです。腎は水を主る 腎は二陰に開竅する・・・ 腎気の固摂の働きはここでも発揮されます。この腎気が虚して固摂が失調すると頻尿になったり、失禁になったりします。
腎が虚した為の頻尿で尿の色が濃く少ない時は腎陰虚です。腎陰が虚したため水を納めることができず、陰虚による虚熱のため膀胱気化(排尿作用)も失調するため発生します。腎虚がもとにあるので、足腰がだるく力が衰えたり、めまい・耳鳴り・などの症状を伴います。また腎気不固は腎の陽気が不足しているため、四肢が温まらないなどの冷えの症状が腎陰虚は寝汗・手足や胸のあたりのほてり(五心煩熱)などの虚熱の症状がでます。
腎陰虚の時の代表方剤は知柏地黄丸(瀉火補腎丸)加減です。これは滋陰降火の働きがあります。陰虚の虚熱が強くなければ杞菊地黄丸、八仙丸などもつかいます。しかし、内熱による気化失調が頻尿をおこしていると考えるので火を降ろす必要があると思います。また、膀胱の湿熱をかねる時は補腎薬に猪苓湯(ボウネツ錠(粒))・瀉火利湿顆粒(竜胆瀉肝湯)・五淋散などを適宜併用します。腎気不固の代表方剤は右帰丸加減です。右帰丸は腎の陽気が衰退して微弱になった時(腎陽衰微)の漢方薬で、温めて陽気を補い、精や血をおおいに補います(温補真陽 填精補血)右帰丸と同じ力のある補腎薬は海馬補腎丸・参馬補腎丸・双料参茸丸・参茸補血丸などがあります。八味丸は腎陽を温める力はありますが、填精補血は弱いので海馬補腎丸などを加えた方がいいようです。また、山茱萸・五味子・覆盆子・桑ひょう蛸・竜骨・牡蛎などは気を納め、しっかり臓に留めさせる働きがあります。補腎薬を使うことは頻尿の改善ばかりでなく、身体の陰陽のバランスを整え、精血を補って身体に力をつけることになります。
わたしも肝腎を補って活血することは必ずしています。また、気虚体質でつかれやすいので補気薬はかかせません。 秋から冬は衛益顆粒・春から夏は麦味参顆粒や西洋人参をよくのみます。肺系が弱いのでこれらは大好きです。腎の働きをもう一度考えてみましょう。