不妊症

パンダ⑦ 中医臨床という中医学の季刊誌をとっていて毎回特集記事がくまれています。今回は不妊症でした。中医学では「不孕」といいますまた妊娠はするが流産したりして育たない事を「不育」といいます。不妊の原因が女性にある場合と男性にある場合の率は近年ほとんど同じくらいになってきているそうです。もちろん双方に問題がある時もあります。結婚して正常な性生活をしているのに2年以上受胎できない場合を不妊というそうです。

 中医学がするのは身体づくりです。特に重要な臓は脾・肝・腎です。女性の生理は「血の道」といわれるように血と関係が深いのです。肝は「血を臓す」といい肝は血をたくわえる蔵ですし、「疏泄を主る」ということで血流量のコントロールをしているので「血の道」とのかかわりは深く「女子の先天」ともいわれます。脾は「生血」(血を生む所)といって食物から血を作ります。また、「統血を主る」といって血が脈管から漏れず正常に運行するようにするのは脾気の働きです。

 腎は血と直接的な関係はありませんが、「精を蔵す」といいます。精は生命エネルギーの基という意味があると同時に微量で身体に影響を及ぼすホルモン系などの事もいいます。肝と腎は密接な関係があって、「肝腎同源」、「精血同源」などといい“みなもとは同じ”と考えられています。また「腎は生殖を主る」といい不妊症の場合とても重要な臓です。

 女性の場合、生理のリズムは大切が肝の疏泄機能と関わっています。旅行に行ったり、仕事が忙しく夜更かしがつづいたり、環境の変化やストレスによって影響をうけます。旅行中こないはずだったのにとか、仕事のストレスできてないとか、ダイエットしてたら生理もこなくなったとか、経験がある人も多いと思います。生理が来るとか来ないとかは現れた現象です。生理から次の生理までに卵胞の育っていく過程があります。卵胞のなかでしっかり育った卵は卵胞から飛び出し(排卵)、卵管の先(卵管采)に吸い込まれ卵管を移動し、子宮に入り授精していなければ着床せずに生理になります。この仕組みにホルモンの働きがかかわっています。

 基礎体温は低温期と高温期の2層になっています。この体温の動きから各ホルモンの状態や卵の育ちや排卵のことなど読み取れます。この過程をこなすには身体の力が必要です。中医学的では気血精が充実し 脾・肝・腎や経脈の流れなどが整えば、身体がしっかりしてきたということになります。女性は自分の気血を使って出産まで赤ちゃんを育てなくてはならないので身体づくりをしっかりしておくことが大切です。ピンポイントで病気をとらえる西洋医学とちがって、中医学(漢方医学)は心も含めた身体全体をとらえ身体づくりしていきます。

 妊娠する為には精血が充足しているかは重要です。チャングムが身体の虚弱なお妃さまに使った紫河車も益精・養血の働きがあります。また、鹿茸は益精血の働きと、血の道の経脈を温め養う働きがあり不妊症によく使われます。参茸補血丸や双料参茸丸・海馬補腎丸にはいっています。この精や血は身体を維持する力の基ですし、この力で赤ちゃんを育て・お乳をだします。また、血は産後の精神的安定にも関りがあります。

 この世に生を受け、腎気が充実し、天癸が成熟すると、衝脈・任脈が通じて月経が来潮します。この経脈が充実し通じていることがとても大切です。血の道というようにこの道は充実し、通じていなくてはいけません。其の為、活血化オや理気行滞(血の巡るを良くする事や気の巡りを良くして停滞しないようにする事)が必要があることもしばしばです。

 *数年前、不妊治療の名医でいらっしゃる中医婦人科の夏桂成先生の講演をきいた事があります。

 女性の生理周期は昼が来て、夜がきてという自然の流れのように低温期という陰から高温期という陽にという陰陽転化のくりかえしからなっている。生命を育てる大役をになった女性の身体が自然の摂理に通じている事を知り感動しました。